はじめに
お手持ちの手帳や壁に掛かっているカレンダーをご覧になると、「大安」や「仏滅」といった言葉を目にされるはずです。「結婚は大安の日が良い」とか「お葬式は友引の日を避けた方が良い」などは聞かれたことがあるでしょう。これらが六曜を構成する曜になります。つまり六曜とは、暦に記載されている日時や方位などと同じく、その日の吉凶や運勢を占うためのひとつの指針と言えるものなのです。「ろくよう」あるいは「りくよう」と読まれます。
六曜の成り立ち
六曜の確立に関して、いつの時代までさかのぼれば良いのか正確にはわかっていません。ひとつの説として、古代中国ではひと月を5等分した6日を一定の周期と捉えており、その単位として用いられていたのではないか、というものがあります。しかしそれも確たる証明がないため、はっきりとはされていません。
その六曜が日本に伝わったのは、鎌倉時代から室町時代にかけてと言われています。ただし、現在の六曜と比べたら名称も解釈も曜の順序も異なっていたようで、今の形になったのは19世紀頃ではないかとされています。江戸時代末期には、庶民の間にも広がって、暦の中にも記載されるようになったとされています。
明治時代になると、六曜は根拠のない迷信の類として、政府が発行する官暦への掲載からは外されることとなりました。第二次世界大戦の後は、暦の発行に政府が関わることもなくなったため、吉凶判断の元になる六曜も復活することになり、また統制もされなくなったことで、今の私たちは暦を神社や寺院、あるいは書店などで気軽に手に入れることができます。
六曜の内容
基本的に六曜は、(先勝→友引→先負→仏滅→大安→赤口)の順番で繰り返されます。ただし、旧暦の毎月1日の六曜は表のように固定されたものになっており、そこから順番があらためてスタートすることになります。
- 1月・7月:先勝
- 2月・8月:友引
- 3月・9月:先負
- 4月・10月:仏滅
- 5月・11月:大安
- 6月・12月:赤口
先勝
「さきがち」「さきかち」「せんしょう」などと読みます。「先んずれば即ち勝つ」の意味となり、何事においてもさっさとこなすように、急ぐことが良いとされる日になります。つまり先勝の日は、予定をすべて午前中に片付けておくこと、午後にズレ込むとあまり良い運勢にならないので結果が出ないかもしれない、と考えておくべきとされます。特に午後2時から午後6時までは凶の時間帯とされます。
友引
「ともびき」と読みます。「冥土に友を引いて行く」との考え方から、この日にお葬式を行うことは避けられる傾向にあります。そのため、休業日にしている火葬場もあるほどです。もっとも、日本に六曜が伝わってきた当初は、「留引」と表記する曜だったとされています。「ゆういん」と読み、その読みに漢字が充てられた際に「友引」になったというものです。つまり本来の意味は現状の継続や停滞であり、決して死が関連する縁起の悪い意味ではなかったと言われています。一方で、「友の幸せを引き寄せる」との意味合いから、結婚式をこの日に行うケースもあります。友引の日は、昼は凶で朝夕晩は吉とされています。
先負
「さきまけ」「せんぶ」「せんまけ」などと読みます。「先んずれば即ち負け」の意味となり、先勝の逆の意味を持つとして現在では受け取られています。そのため、午前中になにかをすることは凶となり、午後に行動することが吉とされています。急いては事をし損じるというように、あまり物事の結果だけを急いで求めず、勤めて平静にいるようにとの意味合いです。
仏滅
「ぶつめつ」と読みます。「仏様も滅するような大凶の日」との意味を持っています。その字面から、仏陀(お釈迦様)が入滅した日と考える人もいるようですが、元々は空亡や虚亡と表記されていた曜で、後になって仏滅の字が充てられたため、そもそも仏教とはまったく関係がありません。六曜の中でもこの仏滅の日はなにをやっても上手くいかない日で、一日を通して凶の運勢とされています。そのため、特に結婚式は避ける傾向にあります。なお一部では、仏滅に「物滅」の漢字を充てることで、物がすべて滅びて新しい物事を始めるに相応しい日として、大安よりも良い日と解釈する人もいます。
大安
「たいあん」とも「だいあん」とも読みます。「大いに安し」の意味を持ち、六曜の中で最も運気の良い日とされています。なにをするにおいても縁起が良くて最良の大吉日とされるので、勝負事やチャレンジ、結婚式や結納なども大安を選んでスケジュールを組む人も多くいます。終日万事吉なので、とにかくこの日に勝負を賭ける人が増える傾向にあります。
赤口
「しゃっこう」「じゃっこう」「せきぐち」などと読みます。元々は陰陽道の赤舌日に由来を持っており、羅刹神が支配する日とされたところから転じて、正午の前後1時間(午前11時から午後1時まで)を除いて1日中が不吉とされています。凶とされる内容が、仏滅とわずか2時間しか違わないので、この赤口の日もなにかをするには向いていないとして避ける傾向にあります。この赤口、六曜が日本に伝わってきたときから唯一名称が変わっていない曜とされています。
六曜について、いかがでしたか。「暦」とか「六曜」とか聞くと、なんだか小難しいような面倒臭いような気がしていた人も、「生活に取り入れてみると、意外に使えるかも」と思いませんでしょうか。もちろん、六曜に科学的な証明はありませんので、風習や慣習の一部として、吉凶判断や行動の指針として、なにかを始める際には気に掛けてみるくらいから日常に取り入れてみるのも良いかと思います。